体外受精、生殖補助医療の現状・№8       2016年12月 3日


④凍結胚移植(凍結ET)、胚培養士
(山陽新聞 2016年6月6日の記事より引用)

▽臨床成績

凍結胚は融解した後、18時間ほど追加培養して発育再開を確認し、自然排卵やホルモン剤投与で調整した子宮内膜にET(胚移植)します。

2011-15年に1003人に1891回採卵し、新鮮ETの1341回のうち750回(56%)で凍結保存でき、257回が出産しました(ET当たり19%)。

出産できなかった症例に960回凍結ETし、218回(同23%)が出産しました。

一方、卵巣過剰刺激症候群などのため新鮮ETをせず全胚凍結保存した278回に凍結ETを486回行い、118回(同24%)が出産し、凍結ETは新鮮ETの出産を上回りました。

これは自然排卵の子宮内膜の方が着床環境が有利なためと考えられ、この結果から新鮮ETを行なわない施設も多くあります。

2013年日本産婦人科学会集計での出生児数は新鮮ET1万406人に対して凍結ET3万2148人と多数でした。

図2は新鮮ETと凍結ETをET当たりで比較したものです。


35歳未満での出産率は新鮮ET33%に対して凍結ET37%で凍結保存による低下はなく、流産率も新鮮ET16%対凍結ET13%で、凍結による増加はありませんでした。

他の年齢区分においても同じ結果で、凍結ETが安全であることがわかります。


▽胚培養士

本稿で4回お話したARTで最も重要な部分、卵子、精子の操作、体外受精、顕微授精、受精胚の培養、凍結保存などは胚培養士が行っています。

当院では4名が微小な対象に緻密で根気のいる作業を、早朝から細心に着実に優しく取り行い、新たな命の誕生の主役として寄与しています。

最近岡山大学に日本初の胚培養士養成講座、ARTセンターが設立され、体系的な専門教を受けた胚培養士が輩出されつつあり、今後のART成績の向上へ期待されます。



◇ 倉敷成人病センター(086―422―2111)

もとやま・ひろあき 広島大付属福山高、岡山大医学部卒。岡山大医学部付属病院、高知県立中央病院、岡山赤十字病院など経て1981年から現職。2015年末までにARTにより2082人が分娩。日本産科婦人科学会専門医。

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。



☆病院では精子と卵子の出会いの距離を確実に近づけてくれます。
(人工授精・体外受精・顕微授精)
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