治療前に凍結 出産へ望み・№1         2021年 2月 8日


(読売新聞2021年1月15日の記事より引用)

●がん不妊 国助成へ

がん治療の副作用で不妊になる恐れがある小児やAYA世代の患者が、事前に卵子や精子を凍結保存する対策について、厚生労働省は来年度から費用の助成を始める。
高額な費用負担の軽減ははかられる一方、出産につながる効果など科学的な検証と、患者を支える人材育成などの課題が残されている。

●心の支援 人材育成急務

「100万円」の壁

抗がん剤や放射線の治療は、卵巣や精巣にダメージを与え、不妊になる恐れがある。
このため、若いがん患者の妊娠・出産の可能性を残すために有力なのが、治療前に卵子や精子、受精卵を凍結して保存する方法だ。
卵子の採取が難しい女児らには、卵巣組織を手術で採取して凍結する試みも始まっている。

現在、凍結保存の費用は公的医療保険の対象外だ。
若年性乳がん患者の支援団体「ピンクリング」の2017年調査では、患者が支払った費用は、50万円以上が5割、100万円以上が2割を占めた。

高額な費用負担が壁となり、保存をあきらめたがん患者も少なからずいる。
山口県周南市の団体職員井上裕香子さん(39)もその一人だ。
16年、35歳で乳がんと診断された。

手術後の抗がん剤治療は不妊のリスクがあり、主治医から、卵子の凍結保存について説明があった。

当時、交際相手はいなかった。
将来、子どもを持つ可能性を残しておきたかったが、悩んだ末にあきらめた。
手術を終えた段階で、がん治療などで120万円以上かかっていた。
「最大100万円」とされた凍結費用は捻出できなかった。

国による助成が決まり、「お金の問題で、子どもを持つ希望をつなげない人が減ればうれしい」と話す。



地域格差の解消

若いがん患者の不妊対策を巡っては、昨年11月現在で21府県が独自に凍結費用の助成を行う。
全国一律の制度が始まることで、地域格差の解消につながる。

国の最新統計では、小児とAYA世代では、年約2万3000人が新たにがんと診断される。
全がん患者の2%に相当する。

新たな助成では、国と都道府県が半分ずつ費用を負担する。
厚労省は年約7000人の利用を見込み、来年度の予算案に、11億円を計上した。
菅内閣が少子化対策をして掲げる不妊治療の保険適用の関連政策だ。
1回の助成の上限額は、受精卵は35万円、卵子は20万円などだ。

1人あたりの助成回数や、対象年齢などの具体的な制度設計は、がん患者や生殖医療の専門家らでつくる有職者検討会で議論する。
2月1日が初会合だ。
がん患者同様、不妊につながる治療を受ける難病患者も対象に含めることも検討する。

検討会の委員を務める鈴木直・聖マリアンナ医大教授は「若い世代は、所得が低い人が多い。希望する患者が使いやすい制度にするために知恵を絞りたい」と意気込む。

アニメも作成

凍結保存の決断は、がんの診断から治療までの短い期間に迫られる。
患者や親は、がん告知されたショックと、将来子どもを持てない恐れと向き合う。

親子の心に寄り添う、丁寧な情報提供とカウンセリングが欠かせない。
担い手として期待されるのが、「がん・生殖医療専門心理士」だ。
日本生殖心理学会などが16年から、公認心理師た臨床心理士を対象に養成する。
認定者はまだ43人。
森本義晴・同学会理事長は「助成制度で、凍結保存のニーズが高まるだろう。人材育成が急務だ」と話す。

対象には、小児も含まれる。
幼い子どもへの情報提供は、工夫が必要だ。
厚労省研究班は、小学生以下の患者向けにアニメ動画を作成した。
病気を闘う女の子が、赤ちゃんを授かるまでの物語だ。
近く、全国の小児がん拠点病院などに暫定版を送り、活用を促す。




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