パパと産後ケア・№2              2019年 8月24日



(読売新聞 2019年4月25日の記事より引用)

●うつ状態 乳児虐待の恐れ

「娘に手を上げてしまいそうです。僕は育児に向いていないんだと思う」
青森県十和田市の高橋進介さん(42)は、昨年7月、当時住んでいた青森市の育児相談で保健師の鹿内千恵子さんに打ち明けた。

4か月前に娘が生まれた。
妻(33)が2か月の産休を終えて仕事に復帰してから、日中は1人で育児を担った。
遺伝性の大腸がんの治療で就労が難しいため、専業主夫を自ら買って出た。

しかし、父子で過ごす時間は予想とは違った。
職場まで妻を送った後の車内で二人きりになると、娘は後部座席で泣き続けた。
オムツを替えても、ミルクをあげても、外の風に当てても泣きやんでくれない。


どこにいても、ホッとできるのは、娘が泣き疲れて眠る数十分だけ。
そのわずかな時間も、また泣き出すのではないかと、怖くてたまらなくなる。
娘が目ざめ、「ふぇふぇ」と声を出すと、背中がぞわっとし、床にたたきつけて黙らせたいという衝動に駆られた。
無条件にかわいいはずの子どもを、どうしても愛せない。

古里の金沢市から遠く離れた青森では、相談する相手もいなかった。
「育児は罰ゲームなのか」と感じた。

鹿内さんは高橋さんの話を聞いた後、産後の女性のうつ状態を調べる「エジンバラ産後うつ病質問票」を渡した。
「物事が悪くいった時、自分を不必要に責めた」「不幸せなので、眠りにくかった」などの問いが10あり、選択式の回答を点数化する。9点以上がうつの可能性が高い。

高橋さんは18点。
「長期的な休みが必要な状態です。お父さん、よく頑張ってきましたね」。
鹿内さんの言葉がうれしくて、高橋さんはボロボロと涙を流した。

国立成育医療研究センター(東京都)が2017年に発表した研究がある。
愛知県西尾市で生後2か月の子どもがいる父親194人が高橋さんと同じ質問票に回答したところ、計17人にうつのリスクがあった。

うつ状態ではないグループを比較すると、「虐待傾向」リスクの割合は7倍以上高かった。
育児に関わる父親の心の状態が、ひとつ間違えば深刻な事態を招きかねないことを示した。


鹿内さんらの提案で、緊急で娘を保育園に預けることになった。
久しぶりの一人きりの時間を、高橋さんは穏やかに過ごした。
妻も出勤日を減らし、家族で過ごす時間を増やした。

すると、こわばった心に変化が起きた。
保育園に迎えに行った際、保育士に抱かれて笑う娘の姿を見て、初めて「ああ、かわいいなぁ」と実感したのだ。

高橋さんは今、1歳になった娘の育児を楽しんでいる。
追いつめられていたあの頃を不思議にさえ思う。



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