生殖医療40年・№1             2019年 6月 3日



(読売新聞 2019年3月18日の記事より引用)

●将来に備え卵子凍結保存

スマートフォンの画面に浮かぶ六つの丸。
初めて見た時の感動は忘れない。
これが私の卵子なんだー。

東京都内の会社員女性A子さん(34)は2017年、千葉県浦安市と順天堂大浦安病院による卵子凍結プロジェクトに参加した。

15~17年度、希望した市内の20~34歳女性を対象に、市が費用の大半を負担して卵子を凍結保存する計画。
凍結卵子の出産率を調べる臨床研究であり、少子化対策の一環でもある。

A子さんは当時32歳。
結婚の予定なし。
「でもいつか子どもがほしい。急がないと」。
そんな思いだった。


大学卒業後、外資系企業に就職した。
働きながら、休日はスポーツに打ち込んだ。
プロも輩出したクラブ。
公私ともに充実した20歳代を過ごした。
その頃、クラブの先輩から妊活の苦労を聞かされた。
「40歳前に子どもがほしいけど、できないのよね」。
自分の将来にも、漠然と不安が兆した。

30歳を目前に欧米へ留学すると、その気持ちは強まった。
留学生仲間の打ち明け話がきっかけだ。
30歳代後半の女友達だった。
「将来に備えて、自分の卵子を凍結保存しているの」

帰国して浦安市に転入し、プロジェクトを知った。

卵子の凍結保存は、がん治療で妊娠できなくなる恐れのある若いがん患者向けに始まった。
今や健康な女性にまで広がる。
仕事などですぐには出産できないが、老化して機能が落ちる前の卵子をとっておきたい。
そんな女性たちがいる。

16年の本紙の調査では、同病院のほか、少なくとも23医療機関が562人の健康な女性の卵子を凍結し、うち3人が出産した。


17年7月に開かれた浦安プロジェクトの説明会では、同病院の産婦人科医、菊池盤(いわほ)さんから詳しい話があった。
「凍結しても、妊娠の可能性は2割程度。採卵するとき、卵巣を刺激するために使うホルモン注射には、副作用の恐れがあります」

それでもA子さんは参加を決めた。
ほかでは100万円ほどかかる費用の多くが助成されるのも魅力だった。
検査などのため5、6回通院し、9月末に採卵した。

卵子の写真をしまったスマホは、いつもそばにある。
「心の支えみたいなもの」。
A子さん、それをそっと握りしめた。
自分の将来像も、描きやすくなったと感じる。
「仕事や体の調子を考え、将来のパートナーと相談しながら、自然妊娠で産むのがベスト。でもいざとなれば、この卵子もある」

プロジェクトで卵子凍結したのは34人。
実際に卵子を使った人はまだいない。

「試験管ベビー」と呼ばれた最初の体外受精児が生まれて40年が過ぎ、自覚ましく進歩した生殖医療。
それは人々に何をもたらし、どこへ行くのか。




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(人工授精・体外受精・顕微授精)
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