生殖医療40年・№2             2019年 6月15日



(読売新聞 2019年3月19日の記事より引用)

●顕微授精は万能ではない

小さな女の子を連れた夫婦が9日午後、東京都中央区のクリニックを訪れた。
Bさん(47)と妻(45)、そして、1歳5か月の長女。
新潟県長岡市に住む一家にとって久々の訪問だった。

不妊治療専門の黒田インターナショナルメディカルリプロダクション。
院長の黒田優佳子さんは、お絵描きを始めた女の子の姿に目を細めた。
「こんなに大きくなって」

夫婦は2008年に結婚。
2人とも30歳代半ばだった。
子どもを望んだが授からず、地元のクリニックを受診。
顕微授精を6回受けた。

顕微鏡をのぞいて活発そうな精子を一つ選び、細い針を使って卵子に注入する顕微授精。
1990年代に日本初の出産例が報告され、広く普及した。
精子が一つあれば人の手で受精卵を作れるので、「確実な方法」という誤解も広がった。

「初めは、不妊といえば卵子の問題だと思っていたけど、だんだん自分の精子に問題がありそうだとわかって。でも。顕微授精なら大丈夫と思い込んでいました」。
それなのに、治療はうまくいかなかった。


15年7月、転機が訪れる。
偶然出合った黒田さんの著書に、こんなことが書かれていた。
「まずは精子の精密検査が必要」
「顕微授精は万能ではない」

黒田さんのクリニックで精密検査を受けると、DNAに損傷のある精子が多いことがわかった。
「顕微授精は向いていないと思います」。
黒田さんの言葉に、思い込みは氷解した。

顕微授精は誰にでも適しているわけではない。
精子は、見た目の動きがよくても、DNAに損傷があれば、うまく妊娠、出産につながらないと考えられている。
Bさんは、DNAの損傷が少ない精子を分けて凍結しておき、まとめて卵子に振りかける体外受精を試すことになった。

顕微授精よりは、自然に近い方法だ。
これで受精に至る精子は、たくさんの精子の中で、いち早く卵子にたどりつく能力のあるもの、つまり、より質がよいものと考えられる。

こうしてできた受精卵を子宮に戻す治療を3回繰り返し、妻は妊娠した。
17年3月、トクントクンと動く我が子の心臓をエコー動画で見たとき、Bさんは思わず涙をこぼした。
同年10月、長女が誕生した。


黒田さんのもとには「33回顕微授精をした」「10年間、顕微授精に数千万円かけた」という夫婦が訪れたこともある。
うまくいかない原因は定かではないが、精子を詳しく調べず、無駄な治療をした可能性もある。

「卵子に比べると精子の研究は遅れ、関心も薄い。ただ、精子をよく調べたからといってうまくいかない場合もある。いくら技術が進歩しても、赤ちゃんは授かるものという意識が大事

と黒田さんが話す。



☆病院では精子と卵子の出会いの距離を確実に近づけてくれます。
(人工授精・体外受精・顕微授精)
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