20年出生数84万人台             2020年11月29日


(山陽新聞2020年10月25日の記事より引用)

●昨年から2万人減 最少更新

2020年に生まれる子どもの数は85万人を割り込み、統計を開始した1899年以降で過去最少の84万人台半ばとなる見通しであることが24日、分かった。
政府関係者が明らかにした。
政府が「86万ショック」と表現した昨年の出生数約86万5000人から、さらに2万人程度減少し、5年連続で過去最少を更新することになる。
新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きく反映される来年の出生数は70万人台に落ち込む懸念も指摘され始めており、抜本的な対策が求められる。

●政府見通し コロナで拍車

厚生労働省の人口動態統計によると、出生数は16年に初めて100万人を下回り、この10年で20万人超も急減。
出生減に直結する未婚化や晩婚化が進んでおり、昨年の出生数は86万5239人だった。

今年は既に公表されている1~8月分の出生数(速報)が、前年同期比2.3%、約1万4千人マイナスの58万人と、85万人を割り込むペースで推移。
9月以降の出生数を左右する今年前半の妊娠届も減ったことが分かっており、年末にかけてプラスに転じる可能性は低い。

厚労省が21日に公表した妊娠届件数の集計では、新型コロナ感染拡大への不安が続いた今年5~7月に前年同期比で11.4%マイナスとなった。
政府関係者は「新型コロナによる経済の先行きへの不安が、今後も悪影響を与えかねない。来年は出生数が70万人台になる恐れもある」と危機感を募らせる。

1人の女性が生涯に産む子どもの数である合計特殊出生率も下落傾向で、昨年は1.36と低迷。
政府は若い世代が希望通りの数の子どもを持てる「希望出生率1.8」を掲げるが、実現にはほど遠い状況だ。
出生数の推計値は、例年、その年の12月下旬に人口動態統計の「年間推計」で公表される。



●出産希望かなう対策を

今年生まれる子どもの数は84万人台と過去最少を更新する見通しとなった。
新型コロナウイルス感染症が国内で流行する前の妊娠状況を反映しており、コロナ禍の影響が大きくなる来年は、さらに厳しい数字が予想される。

バブル崩壊後の就職難に見舞われた40代半ばから30代半ばの就職氷河期世代は、非正規雇用で働かざるを得ない人や安定した職業に就けない人も多く、未婚化や少子化が進んだ。
その傾向はより若い世代にも続いている。
新型コロナは雇用情勢を悪化させ、経済的不安から妊娠を先送りする夫婦も少なくないだろう。

政府は今年再開した全世代型社会保障検討会議で、少子化対策を議論した。
不妊治療の保険適用拡大や男性の育児休業取得促進、待機児童解消といった正社員で働く人や夫婦向けの施策が中心で、結婚や妊娠に踏み出せないカップルへの対策は置き去りのままだ。

若年世代からは必要な少子化対策として、非正規就労者の待遇改善や長時間労働の是正を求める声が大きい。
政府には、結婚や出産の希望がかなうような抜本的な雇用対策が求められる。


●人口動態統計

戸籍法などに基づいて市区町村に届けられる出生、脂肪、婚姻、離婚などの件数を厚生労働省が集計した統計。
国の施策の基礎資料で、少子化対策でも参考にする。
毎年12月に、その年の1~10月の速報値などを基に1年分を計算した年間推計を公表する。
今年の速報値は現時点で8月分まで公表されている。
毎年6月ごろに前年1年分の概数を公表、女性が生涯に産む子どもの推定人数を示す合計特殊出生率も算出する。
9月には確定数を出している。




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