(読売新聞2021年10月14日の記事より引用)
不育症の診療指針の作成に携わった杉ウイメンズクリニック院長の杉俊隆さんに、検査や治療について聞いた。
●不育症の定義は。
「子どもを望むのに1年以上妊娠しない『不妊症』と違い、妊娠はするけれど、流産や死産を2回以上繰り返すことを言います」
「妊娠経験がある女性で、流産を1回以上経験した人は38%に上ります。2回以上は4.2%、3回以上は0.88%です。1人目を出産した後に、不育症になる人もいます」
●原因は。
「夫婦の検査をしても、6割に異常はありません。流産した際に採取した胎盤の組織を調べれば、その多くが胎児の染色体異常によるものだとわかります。胎児の染色体異常は、人間のような複雑な生物が誕生する過程で、偶発的に起こりうることです」
「夫婦の検査で判明する原因として多いのは、『子宮の形態異常』『甲状腺の機能異常』『夫婦の染色体異常』血栓症などが起こりやすくなる『抗リン脂質抗体症候群』などです。ただ、これらの原因が見つかっても、必ず流産するわけではありません。流産を引き起こすメカニズムについては今なお研究中です」
●検査はいつ受けたらよいでしょうか。
「流産を繰り返したり、死産したりした場合は、検査を受けることを考えて下さい」
●どんな検査ですか。
「子宮の形態を調べる画像検査、抗リン脂質抗体を調べる血液検査、夫婦の染色体を調べる血液検査、流産した胎児の染色体の検査などは推奨されます。一方で、不育症との関連が明らかではなく、推奨されない検査が行われていることもあります。不要な検査は受けないようにしましょう」
●治療は。
「原因によって、適切な治療方法は異なります。例えば、抗リン脂質抗体症候群の場合は、血栓を防ぐ二つの薬の併用が推奨されています。20、30年前は、医療機関によって検査や治療法にばらつきがありましたが、近年は標準化されてきました」
「私たち不育症診療医のグループが3月に発表した診療指針『不育症管理に関する提言2021』で、標準的な検査や治療法を詳しく記しています。インターネットで閲覧できます」
●治療すれば出産できますか。
「夫婦側に原因が見つかった場合は、治療すれば8割以上が出産できます。原因が見つからなかった場合も、投薬治療をせずに8割以上が出産に至ると報告されています。原因不明の不育症をターゲットにした治療薬の研究も進んでいます」
「家族の形は、それぞれですが、子どもがほしいと望む人には、その気持ちに応えたいと思っています」
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