(読売新聞 2024年1月13日の記事より引用)
●権利条約の周知が必要だ
今後5年程度の国の子ども政策の基本方針となる「子ども大綱」が昨年末、閣議決定された。
昨年4月に施行された「こども基本法」で定められたもので、少子化社会対策や子どもの貧困政策など、子ども政策関連の三つの大綱を一本化。
子どもや若者を「権利の主体」と位置付け、意見を尊重すると明記した。
取り組むべき重要事項として貧困や虐待、いじめ、自殺などを防ぐ対策や、病気や障害のある子どもへの支援強化などを挙げている。
こども基本法とそれに続く大綱の基本理念として、子どもの権利保障が位置付けられたことは子ども政策の大きな転換であり、評価したい。
具体的な政策は政府が6月をめどに「こどもまんなか実行計画」として取りまとめ、骨太の方針や予算の概算要求などに反映させる。
都道府県や市町村も「こども計画」の策定が努力義務となる。
子ども政策の優先度を高めていかねばならない。
大綱ではおおむね5年後の数値目標も定めた。
国の意識調査などで「今の自分が好きだ」と思う自己肯定感のある子どもや若者の割合を現状の60%から70%へ、「自分の意見が聴いてもらえている」と思う子どもや若者の割合を20%から70%へ引き上げる。
子どもの意見を尊重する社会にするには、まずは大人の認識を変えていくことが求められる。
子どもは未熟で、大人が決めたことに黙って従えばいいー。
そう考える大人は少なくないだろう。
大綱には、基本理念となる「子どもの権利条約」についての啓発の必要性も盛り込まれた。
同条約は1989年に国連総会で採択され、日本を含め196の国と地域が批准する。
生きる権利、育つ権利、意見を表明する権利、知る権利、教育を受ける権利、休んだり遊んだりする権利など、全ての子どもが平等に持つ権利が明記されている。
日本は批准してから今年で30年になるが、国内法の整備が遅れ、子どもの権利に関する国民の認知度は低い。
国の調査では、子どもが権利の主体であると思う人の割合は2023年時点で54.4%にとどまる。
社会の変化を子どもたちが実感するには、接する大人の対応が変わらねばならない。
子どもに関わる全ての大人、そして子ども自身に子どもの権利を周知する必要がある。
懸念されるのは大綱で子どもの権利保障をうたいながら、人権侵害があった場合に救済を図る第三者機関の設置が遅れていることだ。
国連子どもの権利委員会は設置を要請するが、政府は見送っている。
国内でも一部自治体は第三者機関を設けている。
先行事例を分析し、政府は設置に向けた議論を進めるべきだ。
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