(山陽新聞2021年4月1日の記事より引用)
●出生前診断 情報提供へ
妊娠中に胎児の異常を調べる出生前診断について、厚生労働省は31日、「医師が妊婦に対して検査の情報を積極的に知らせる必要はない」とする方針を約20年ぶりに転換する方針を打ち出した。
インターネット上にさまざまな情報があふれており、高齢出産などの不安を抱える妊婦に正しい情報を届け、意思決定を支援するのが狙いだ。
ただ情報提供の在り方次第で染色体疾患の当事者らへの差別を助長しかねないとの懸念もある。
●黒船の衝撃
「海外資本から黒船のように入ってきたようなインパクトがあった」。
2020年末に開かれた厚生労働省の専門委員会。
ある委員は出生前診断の手法の一つで1990年代から使われている母体血清マーカー検査が登場した当時のことをこう振り返った。
妊婦の血液中にあるタンパク質やホルモンを測定し、胎児に染色体異常がある確率を出すが、制度は劣る。
検査によって「障害者が否定されるような社会風潮が起こりかねない」といった議論が巻き起こる中で、99年に「検査の情報を積極的に知らせる必要はない」との見解が示された。
その後、産科医療の現場では、妊婦健診で出生前診断に関する説明は一般的に行われなくなった。
●苦悩する女性
約20年が経過し、出生前診断を取り巻く環境は一変した。
血液中の遺伝子を調べる新出生前診断の登場や超音波検査の性能向上などで胎児のさまざまな病気を高い精度で把握できるようになったためだ。
出産の高齢化という要因も加わって新出生前診断への関心が高まり、学会の指針に従わず、無認定で検査を提供する民間クリニックが急拡大した。
こうした問題を検討するために設置された専門委では、法規制を設けるべきだとの意見も出たが、時間がかかることから実施施設の認証制度の創設を目指すこととし、情報提供の在り方にも重点を置いた。
インターネットで検査の存在を知り、認定、無認定を区別せずに施設を選んだり、検査の限界を理解しないまま受検したりする実態があるためだ。
検査を受けるかどうかや胎児に異常が見つかった場合の対応を短時間で決めざるを得ず、苦悩する女性も少なくない。
葛藤を抱える妊婦らへの支援の一環として、妊婦が正しい情報にアクセスし相談できる環境を整備することを決めた。
ただ、日本ダウン症協会は、情報提供の内容や方法次第で「ダウン症が検査をして産むか産まないか選択する必要がある障害だとの誤った理解を広めかねない」として丁寧な対応を求めている。
●遺伝教育を
新出生前診断の登場当初は三つの染色体異常しか調べられなかったが、無認定施設の中には「安心」を掲げて、より多くの異常が調べられるプランを顧客に勧めるところもある。
ただ、こうした疾患は発生頻度が非常に低いため、検査で誤って陽性と判定される確率が高く、昭和大の関沢明彦教授は「一般の妊婦に推奨できない」と警鐘を鳴らす。
検査技術が進展する一方で優生思想の助長を懸念する声もある。
関沢教授は「遺伝学的な多様性を受け入れられる社会づくりに向けて、遺伝に関する正しい知識を学校教育の段階から学べる環境を整えるべきだ」と話す。
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