(山陽新聞 2023年2月26日の記事より引用)
●東京の不妊治療施設
昨年2月から1年 ドナー7割「非匿名」
提供精子を用いた人工授精(AID)や体外受精を実施する東京都の「はらメディカルクリニック」が昨年2月からドナーを一般募集し、1年でAIDの国内の総実施件数に相当する約2千回分の精子を確保したことが25日、同クリニックへの取材で分かった。
一般募集は異例。
7割の人が出自を知る権利を踏まえ、生まれてくる子どもが将来希望すれば面談や手紙などのやりとりに応じる「非匿名」提供を選択した。
AIDは70年以上の歴史があるが、ドナー情報を子どもに知らせない匿名提供が続けられてきた。
超党派の議員連盟が進める生殖補助医療の法整備議論に関し「非匿名化すればドナー確保が難しくなる」と指摘されるが、今回の結果は懸念払拭の一助となりそうだ。
宮崎薫院長は「『困っている人を助けたい』などを提供の理由に挙げるドナーが多い。非匿名での提供は、遺伝的ルーツをたどりたいという子どもの気持ちに応える姿勢の表れだ」と話した。
非匿名ドナーの精子は、AIDを複数回受けても妊娠せず、より技術的に高度な顕微授精を実施する際に用いる。
18日時点で33組の夫婦が顕微授精を受けたという。
同クリニックは従来、精子提供を医学生に依頼していたが、2022年2月からウェブサイトなどで20~39歳の男性に協力を呼びかけた。
23年1月までの応募者は279人。
精子の検査所見などの審査を経て147人がドナー登録、計2067回分の精子を確保した。
非匿名を選択したドナーは103人。
子どもが18歳以上になって希望すれば、ドナーとの面談や、電話、メール、手紙での接触についてクリニックが双方の意向を確認しながら仲介する。
ドナーの氏名や生年月日などの個人情報を子どもに伝えるかどうかは、面談などの接触後に双方の合意に基づき対応する。
匿名ドナーの場合はこうした接触の機会はなく、個人情報も伝えられない。
匿名、非匿名を問わず、ドナー自身が体の特徴や趣味、職業、提供の理由などを記入した「精子提供者の周辺情報表」を妊娠した夫婦に渡す仕組みも導入、子どもの成長に合わせてドナーがどんな人か伝えられるようにした。
夫婦が同様の情報に基づき、ドナーを選択することはできない。
●公的機関で記録保管を
AIDに詳しい久慈直昭・東京医科大教授(産科・婦人科学)の話
精子ドナーの確保はこれまで医学生などに頼ってきたのが実情で、医療機関が一般の男性に広く提供を募る今回のような取り組みは珍しい。
これだけの数が集まったのは、潜在的な提供の意思を掘り起こした結果ではないか。
出自を知る権利を踏まえた「非匿名」での提供が多いのも、生まれてくる子どもから見れば喜ばしいことだ。
ただ、ドナーに関する情報などを提供時の記録を個々の医療機関が永続的に保管するのは極めて困難。
きちんと法整備をし、公的な機関が責任を持って保管するべきだ。
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(人工授精・体外受精・顕微授精)
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