(山陽新聞2020年11月23日の記事より引用)
●子の苦しみ置き去り
提供精子で生まれた人たち「出自知る権利」訴え
第三者が絡む生殖補助医療で生まれた子どもの親子関係を明確化する民法の特例法案が、今国会で成立する見通しだ。
不妊に悩む夫婦にとっては前進となるが、子どもが遺伝上の親の情報を得る「出自を知る権利」は検討事項のまま。
こうした技術で生まれた当事者は「技術優先で子どもの苦しみは置き去りにされている」と訴える。
「今でも遺伝上の父を捜したいと思っている」。
横浜市の医師加藤英明さん(46)は、医大生だった29歳の時、血液検査の実習で父親と血のつながりがないと分かった。
母に尋ねると、男性不妊が原因で、慶応大病院で治療を受け、精子提供による非配偶者間人工授精(AID)で生まれたと打ち明けられた。
●父親を捜し続け
自分の体の半分が知らない誰かでできているえたいの知れなさ。
29年間、だまされたという思い。
AIDについて調べ、父親探しを始めた。
2014年には、慶応大病院に情報開示を求めたが、病院側は「資料は残っていない」と回答。
いまだに分からぬままだ。
医師の間では「プライバシーが脅かされれば提供者がいなくなってしまう」との考えが根強い。
実際、慶応大病院は18年、出自を知る権利を求める動きが世界的に広がり提供者が減ったとして、AIDを停止。
今も再開の見込みがない。
「遺伝上の親を知りたいというのは人間として普遍的な要求だ」と加藤さん。
「自分たちの技術が一人の人間を生み出すことだという感覚が欠如している」
●親と医師の利益
「法案は子どもがほしい親と治療実績を上げたい医師の利益にしかならない」と話すのは同じくAIDで生まれた東京都の石塚幸子さん(41)。
「生まれた子の不安定な法的地位が解消される点には反対できない」としながらも「まず真実を伝え、子どもが望むならいつでも情報にアクセスできるようにすることがより大切だ」と訴える。
法案は16年に自民党の部会で了承されて以降放置されたままだった。
今回、超党派の議員立法の形で突如、国会に提出されたが、当事者の意見が求められたが、当事者の意見が求められたのは提出直前に開かれた立憲民主党の会合だけ。
「まるでアリバイ作りのようだ」
法案は付則で、生まれた子に関する情報の保存や開示制度の在り方について「おおむね2年を目途に検討」とした。
だが、加藤さんも石塚さんも「先に親子関係を明確にしたとしても生殖補助医療にお墨付きを与えれば、出自を知る権利が議論されるとは考えにくい」と同意見だ。
●胸張って伝えて
日本でAIDが始まってから70年超。
生まれた子どもは1万人以上とも1万5千人以上ともされる。
だが、多くは真実を一生知らされることもないまま、生きているとみられる。
「出自を知る権利が保障され、親がきちんと告知をする環境が整わなければ、AIDをやるべきではない」と石塚さん。
加藤さんも「親がやましいと思わず、『あなたに生まれてほしくてこういう技術を使った』と胸を張って伝えてほしい」と話している。
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