生殖補助医療法成立 11歳長男 提供者に感謝 2021年 1月16日


(山陽新聞2020年12月5日の記事より引用)

●その人がおらんかったら生まれてない

生殖補助医療で生まれた子の法律上の親を明確化する民法の特例法が4日、成立した。
「(精子の提供者は)誰なん?」。
数ヶ月前、兵庫県宍粟市の前田良さん(38)は長男(11)から唐突に尋ねられた。
第三者からの精子提供で長男や次男(8)が生まれたことは話していたが、提供者のことを質問されたのは初めて。
理由を聞くと「その人がおらんかったら僕ら生まれてない。パパにもママにも感謝してるし、その人にもありがとうって言いたい」。

前田さんは幼い頃から女性としての体の違和感を持っていた。
性同一性障害特例法に基づき2008年に戸籍上の性別を男性に変更。
生殖補助医療を利用したのは、同年結婚した妻(38)と話し合った末の結論だった。

「妻には僕と一緒になったことで子どもを諦めてほしくなかった。里親や特別養子縁組も考えたけど、精子の提供を受けることにした。父と母になることができ、提供者には感謝しかない」

当初は法律上の父子関係は認められなかった。
理由は変更前の戸籍の性別が女性だったこと。
裁判を起こした結果、13年12月に「血のつながりがないことが明らかでも夫の子と推定できる」との最高裁の初判断を勝ち取り、父子と認められた。

それから約7年たった4日。
第三者が絡む生殖補助医療で生まれた子どもの親子関係を明確化する民法の特例法が、議員立法で成立した。
何年も議論が止まっていたのに、11月17日の国会審議入りからわずか3週間弱。
「こんなに簡単にいくなら、僕も苦しまなくてよかったんじゃかいかって」と不満を隠せない。

性的少数者や単身の人など、性や家族には多様な在り方があると考える。
子を望む誰もが生殖補助医療という選択肢を選べるように法律を運用し、利用しやすい環境を整えてほしいと願う。

議論が先送りになった、子の「出自を知る権利」は認められるべきだと思っている。
「育てる大人側にすれば提供者は匿名の方がいいかもしれない。ただ親になってみて子どもの気持ちがすごく大切だと感じるから」
「提供者が本当の父と母という論調があるが、それは違う」。
息子2人を育ててきた父として強く思っていただけに、屈託のない長男の言葉を聞き、ただうれしかった。



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