(山陽新聞 2022年10月23日の記事より引用)
●接種率向上へ県啓発 動画や出前講座
子宮頸がんを予防するHPVワクチンの接種率を上げようと、県が啓発に力を入れている。
副反応への懸念から一時は国が推奨を取りやめ、県内の接種率は大幅に下がったが、ワクチンの効果を伝える動画やリーフレットの作成、出前講座の実施など独自の取り組みが奏功し、全国を上回る水準に。
国は4月から推奨を再開させており、県は接種への不安を踏まえつつ「正しく理解し、接種を予防に役立てて」と呼びかける。
「20代、30代の女性に子宮頸がんになる人が増えとんよ」。
バーチャルユーチューバーの高校生が岡山弁で語るのは、県が7月に作成した啓発動画だ。
子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染で起こり、ワクチンは17歳までの定期接種(最大3回)で発症リスクが88%減少するとされる。
動画ではこうした特徴や、国内で年間約3千人が亡くなっている現状、小学6年から高校1年が受けられる無料接種なども説明する。
●全国上回る
定期接種は2013年4月に始まったが、手足のしびれなど副反応が疑われる報告が相次ぎ、国が推奨を中止。
定期接種者をその年の13歳女子数で割った県内の1回目の定期接種率は、13年度に14.5%だったが、14年度は1.3%になった。
ただ、定期接種は推奨中止期間も行われ、16年には関係学会が「有効性は明らか」との見解を発表。
県は推奨再開を待たず、19年度から有効性やリスクを周知する事業を始め、独自に作成したリーフレットを学校や自治体に配布、教職員向けの研修会も開いて理解を求めてきた。
この結果、19年度の接種率は全国3.3%に対し、県内は10.2%。
20年度も全国(15.9%)を上回る23.4%になった。
今年7月には伊原木隆太知事が大安寺中等教育学校(岡山市)で出前講座を開催。
「子宮頚がんはワクチンで予防でき、接種してほしい」と述べた。
●正しい理解必要
ただ、副反応への不安は小さくない。
県が3月に行った女子中高生へのアンケートでは、ワクチンを受けるかどうかの設問に「いいえ」「分からない」とした計876人の4割近くが「副反応が心配」と回答した。
県の協力医療機関の岡山大病院には13年以降、副反応を疑った相談が約20件あり、ワクチンとの因果関係は不明だが、脱力感やめまいなどの症状が寄せられた。
産婦人科の小川千加子医師は「接種後のストレス反応はどのワクチンでも起こり得る」とした上で「副反応への不安感をなくすためにも正しい理解が必要」と指摘する。
県健康推進課は「予防策の一つとして正しくワクチンを知ってほしい。不安な場合は県やかかりつけ医に相談して」としている
●県、来月23日セミナー
県は子宮頸がんの予防啓発セミナーを11月23日午後2時から、岡山市北区奉還町の岡山国際交流センターで開く。
基調講演では、一般社団法人チャイルドリテラシー協会(堺市)の代表理事で、小児科医の今西洋介さんが病気の特徴や注意点を説明。
元厚生労働省がん対策推進協議会委員の阿南里恵さんが、自身の治療や闘病体験を語る。
伊原木知事や産婦人科医らのトークセッションもある。
無料。先着50人。ビデオ会議システム「Zoom」でも参加できる。
6日までに県ホームページから申し込む。
セミナーや子宮頸がんワクチンに関する問い合わせは県健康推進課(086-226-7331)。
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