体外受精、生殖補助医療の現状・№4       2016年11月 3日


②治療の流れ
(山陽新聞 2016年5月2日の記事より引用)

▽採卵、受精、胚発育

卵巣は膣壁のすぐ裏側に接しており、経膣超音波に取り付けた採卵針を1㎝刺入すると卵胞に針が入り、卵胞液3~4mlを吸引できます。

実体顕微鏡で採取した卵胞液をくまなく観察すると卵子が見つかります。

卵子を得られない卵胞もあります。

ショート法1117回において全年齢の平均で10.6個の卵胞を吸引し、7.6個の卵子を得られます。

採卵針は20ゲージの細い針ですが、何度も刺して痛いので鎮静剤の点滴で眠ってもらい、15分で完了します。

夫は精子を採取し、その数や全身運動性の状態によって通常の体外受精か顕微授精かを決めます。


通常法では卵子と精子50万個/mlをシャーレに入れて受精を待ち、顕微授精では卵子に1個の精子を注入します。

採卵の翌日(1日目)平均4.6個が受精し、細胞分裂が進みます。
2日目に標準で4分割胚、
3日目8分割胚、
4日目から分裂速度が加速し、桑実胚と呼ばれる16~32分割胚になり、

5日目に胚盤胞に成長します。
胎児の細胞群と外表面の胎盤の細胞群に分かれて発育し、着床が可能な構造になります。

平均2.6個が胚盤胞に達します。


▽子宮内への胚移植(ET)

5日目に胚盤胞1個を子宮に戻します。

直径1.5㎜の柔らかなチューブに移植杯と0.03mlの培養液を吸い上げ、チューブを子宮の内腔に挿入し、押し出します。

終了後は安静の必要も無く通常の生活が可能です。

妊娠できれば採卵から21日後に胎嚢を確認できます。


移植胚の数は長い間2、3個でしたが、多胎妊娠が増加した未熟児医療、NICU(新生児集中治療室)の疲弊につながって大きな問題になりました。

このため2008年に日本産婦人科学会が胚移植数を1個にする勧告を出し、現在は原則1個の胚移植が主流になっています。

これにより多胎妊娠は激減しましたが、その一方で余った胚を凍結保存し、融解胚移植する機会が激増し、日本は世界一の凍結胚での出産大国となりました。

当院も含め、全国で新鮮胚よりも凍結胚での出産の方が2.5倍多くなっています。


◇ 倉敷成人病センター(086―422―2111)

もとやま・ひろあき 広島大付属福山高、岡山大医学部卒。岡山大医学部付属病院、高知県立中央病院、岡山赤十字病院など経て1981年から現職。2015年末までにARTにより2082人が分娩。日本産科婦人科学会専門医。

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

続きは№5でご紹介します。



☆病院では精子と卵子の出会いの距離を確実に近づけてくれます。
(人工授精・体外受精・顕微授精)
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