体外受精、生殖補助医療の現状・№7       2016年11月20日


④凍結胚移植(凍結ET)、胚培養士
(山陽新聞 2016年6月6日の記事より引用)

体外受精や顕微授精で受精し発育中の形態良好胚をいったん凍結保存して、後日融解し子宮に戻す方法を凍結胚移植(凍結ET)といいます。

凍結ETでの世界初の出産はオーストラリアで1983年、日本では89年でした。

当院では91年から現在までに646人が出産しました。


そのうちの1人は採卵を26歳で行い、17個の卵子を得て、乏精子症のため顕微授精し、8個が胚盤胞に発育しました。

7個を凍結保存し、1個を新鮮胚移植(新鮮ET)して1人目を出産しました。

3年後に1個を凍結ETして2人目を出産し、その4年後に再び1個を凍結ETして3人目を出産しました。

1回の採卵で7年の間に新鮮胚と凍結胚とで3人の子を希望の時期に得ました。

凍結保存が長期間に及んでも新鮮胚の生命力が正常に保たれ、融解後に新鮮胚と同じ発育が始まることを証明した一症例です。

他にも新鮮胚と凍結胚、あるいは凍結胚だけで2人や3人の年齢違いの子を出産した例が多数あります。

凍結期間が年余にわたることがありますが、大多数(85%)の症例は新鮮ETが不成功だった翌月など1年以内の凍結期間で凍結ETしています。


▽胚凍結と融解の方法

2000年ごろまで凍結保存は緩慢凍結法で2時間以上を要しました。

その後研究が進み、30分以内に凍結操作を完了できる簡便さと実用性に優れ、なおかつ成績の良いクライオトップを用いた超急速ガラス化凍結法が現在では主流になり、当院でも06年に導入しました。

クライオトップに耐凍保護液の極微小滴を乗せ、この中に前処理をした胚を浸します。

これを直ちにマイナス196℃の液体窒素に漬けて凍結させ、液体窒素タンク中に保管します。

良好に発育した大きな胚盤胞は胞胚液が凍結障害の誘引になるので吸引縮小させて凍結します。

融解は37℃の融解用培養液にクライオトップを漬けて胚を取り出し、細胞内の耐凍保護剤を浸透圧の異なる培養液で段階的に抜き、通常の胚発育用の培養液に入れて完了です。

融解操作も30分以内で完了します。



◇ 倉敷成人病センター(086―422―2111)

もとやま・ひろあき 広島大付属福山高、岡山大医学部卒。岡山大医学部付属病院、高知県立中央病院、岡山赤十字病院など経て1981年から現職。2015年末までにARTにより2082人が分娩。日本産科婦人科学会専門医。

※登場する人物・団体は掲載時の情報です。

続きは№8でご紹介します。



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