てんかん治療新事情              2018年10月30日



(読売新聞 2018年10月15日の記事より引用)

●新薬普及で妊娠安全に

「この子が生活の中心の今はすごく幸せです」。
神奈川県横須賀市の会社員C子さん(30)は、1歳になったばかりの長女を抱えてほほえむ。
長く子どもを諦めていたが、医師のサポートと新しい薬の服用で出産することができた。

C子さんの最初の発作は、高校1年生の時、寝ている時に起きた。
全身がけいれんしていることに家族が気づき、病院に運ばれた。
四つの病院を回っても、原因はわからない。

7年後の2011年、友人のアドバイスがあり、てんかんの専門医に診てみらうため、原クリニック(横浜市南区)を訪ねた。
付き添ってくれた両親がC子さんの発作の様子を医師に説明し、初めて診断がついた。

抗てんかん薬を服用するC子さんには、心配なことがあった。
将来の出産を望んでいる。
副作用は大丈夫だろうか?


健康な人でも先天的に異常のある赤ちゃんが2~5%の確率で生まれる。
だが、妊娠中に母親が抗てんかん薬を服用している場合、薬によって異なるものの、リスクは2~3倍高まるとされる。
量が多いほどその割合が高くなる。

悩んだ末、C子さんは自分で判断して服薬をやめた。
クリニックからも次第に足が遠のいた。

転機は結婚を控えた16年3月。
しっかり治療しようと思い直し、再び同クリニックを訪ねた時だ。
おそるおそる「薬を飲んでいたら子どもを産むのは無理ですよね」と尋ねるC子さんに、診察した院長の原恵子さんは「そんなことないわよ」。
C子さんは一瞬、あっけにとられた。

この5年間に、状況は変化していた。
08年に登場したラミクタール(商品名)という薬がある。
原さんによると、この薬の場合、子どもに先天性異常が生じる確率が健康な人に比べほとんど変わらないことがわかり、C子さんのような女性にも広く使われるようになっているという。

少量での同薬の服用が始まり、やがて待ちに待った妊娠。
「本当に大丈夫かな」という不安は消えなかった。
とはいえ、薬は飲まずに発作が起きて一時的に呼吸が止まり、おなかの子に影響が出ることも怖い。

昨年9月、「そんな悩み事もなかったような」安産で、長女が生まれた。

原さんは安全にお産を迎えてもらうよう、発作のタイプや頻度、服用薬お情報を産科医に事前に伝えていた。
妊婦のサポート態勢も、5年前より進んでいた。

C子さんは「適切な治療があれば、自分と同じように悩んでいる人も出産できることを知ってほしい」と話している。


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