(山陽新聞2021年11月4日の記事より引用)
●慎重な運用が求められる
流産を防ぐため、体外受精した受精卵の染色体に異常が無いかどうかを調べる「着床前検査」について、日本産科婦人科学会(日産婦)が不妊治療クリニックなどでの実施を容認する方針を先月明らかにした。
検査を受けられる患者や施設の基準を来年初めにも策定し、公表する。
現在は研究目的などの場合を除いて禁止しているが、多くの施設で検査を受けられるようになる可能性がある。
流産を繰り返してきた人の苦しみを軽減することが期待される。
一方で、命の選別につながる懸念は拭えず、慎重な運用が求められる。
検査では受精卵の細胞を一部取り出し、染色体を調べる。
異常が無い受精卵を子宮に入れ、出産につなげるものである。
日産婦は従来、染色体の部分的な異常を原因とする習慣流産を検査対象として認めてきた。
国内では、一部のクリニックで実施例があるほか、日産婦は2020年から4千人以上が参加する大規模臨床研究を実施してきた。
その結果、異常の無い受精卵を戻した際の流産率は10%と、国内で体外受精を実施した場合の25%程度から低下したと発表している。
これを受け、不妊治療として有用であるとの見解を示した。
妊婦の中には、流産しやすい体質の人がいるほか、加齢によっても流産は増加するとされる。
晩婚化などに伴い高齢で妊娠する人が増える中、検査の拡大が朗報となる人もいよう。
しかし、過度な期待は禁物と言わざるを得ない。
大規模臨床研究の結果で子宮に入れることが可能と診断された受精卵は、全体の4割ほどしか得られなかった。
出産に至る割合は通常の体外受精とあまり変わらないとも推測されている。
さらに、命の選別を心配する小児科の医師やダウン症の子を持つ親の団体からは、慎重な実施を求める声があることも看過できない。
不妊治療だけではなく、障害のある子どもが生まれないようにする目的で使われかねない懸念もあるからだ。
検査をする人が増えることで、障害者への否定的な認識が広がり、社会から孤立するようなことがあってはならない。
関係者は注意して技術を使うことが欠かせない。
日産婦は検査の対象者の条件として、子宮に受精卵を2回以上移植しても妊娠に成功しない人や、過去に流産を2回以上繰り返している人などを挙げている。
対象年齢を設けるかどうかは議論するという。
検査がなし崩しで広がらない歯止めが必要だ。
検査の過程では受精卵自体を傷つけるリスクも伴う。
検査を受ける人にメリットとデメリットを丁寧に説明することが大切なのは言うまでもない。
その上で自分に必要な検査かどうかを冷静に判断できる環境を整えてほしい。
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