(読売新聞 2019年3月12日の記事より引用)
●母健カード? それなんですか
仕事の負担を晴らしてほしくても、言い出せない妊婦は少なくない。
そんな妊婦のために、医師が必要な対処法を記し、内容を雇用主に守らせる仕組みがある。
母性健康管理指導事項連絡カード(母健カード)だ。
妊婦の強い後ろ盾になるはずだが、あまり知られていないようだ。
●低い認知度 半日勤務認められず
「その紙はなんですか?」
昨年7月、首都圏に住む会社員女性(36)は、人事担当者にそう言われた。
「人事の人が知らないって、どういうことなんだろう」。
すっかり萎縮してしまった。
担当者が「その紙」と言ったのが、母健カードだった。
「重症のつわり。半日勤務が望ましい」などと医師が書き込んでいた。
女性も「それなら働けるかも」と思っていた。
当時、妊娠4ヵ月。
眠れない日が続き、何を口に入れても吐いた。
水分も受けつけなくなり、血を吐いた。
体重は2週間で3キロも減った。
「このままの状態で働き続けるのは母子双方に良くない。会社の方はカードを書いたので大丈夫。安静にする時間を増やして様子を見ましょう」。
医師がそう言って手渡してくれたのが、母健カードだった。
しかし、効力は発揮されなかった。
それどころか、社長や上司から何度も心ない言葉を浴びた。
「つわりがそんなに酷いわけがない」「正社員なのに半日勤務なんて認められるわけないだろう」。
元々、職場の人数はぎりぎりで、普段からトイレに立つのもはばかられるような雰囲気だった。
それから約1ヵ月。
状況は変わらず、働き続けた。
自宅で大量出血し、医師から「責任が持てない」などと言われ、結局、妊娠6か月で退職した。
「あのカードは一体何のためにあったのか。心身ともに疲れ果て、自分と子どもを守るためには、退職しかなかった」と振り返る。
続きは№4でご紹介します。
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