(読売新聞 2019年5月21日の記事より引用)
●葛藤抱え中絶を選択
手のひらより少し大きい我が子は、身動きもせずガーゼにくるまれていた。
手の指も1本1本ある。
涙が止まらなかった。
さっきまであった胎動は、もう感じない。
「私の勝手な都合で、産んであげられなくてごめんね」。
泣きながら謝った。
2018年9月、人工妊娠中絶の直後わずか10分の対面だった。
さいたま市内に住む横山綾子さん(31)が胎児の異常を知ったのは妊娠20週の時。
超音波検査で心臓にいくつも異常があることがわかった。
18トリソミーという染色体の病気である可能性も高いと言われた。
現在、様々な検査により、生まれる前に胎児の病気がわかる。
超音波検査のほか、2013年4月から日本に導入された新型出生前検査は、採血だけで18トリソミーやダウン症といった染色体異常の可能性が判定される。
確定診断としては主に、妊婦のおなかから羊水を採取する検査が行われる。
いずれにしても病気がわかれば、中絶につながるかもしれないという重い意味を持つ。
新型検査の場合、実施する医療機関の団体が調べたところ、「陽性」が出て、診断が確定した人の9割が中絶していた。
横山さんには、7歳と4歳の2人の男の子がいる。
おなかにいたのは女の子。
生まれてきたら、かわいくてたまらなくなったに違いない。
だが、18トリソミーの子は死産も多く、生まれても9割が1年以内に亡くなるという。
心臓病もかなり重症だった。
「自分の子が亡くなる悲しみに耐えられない。今なら傷は小さくて済むのでは」。
そう思いかけてすぐ、今度は罪悪感にとらわれた。
「自分の子の命を奪いたくない。親としてできることを最期まですべきなのでは」。
気持ちは揺れ続けた。
夫婦で話し合い、中絶を決めた。
長男と次男の生活に負担がかかるのを避けたかった。
看病で仕事を辞める経済的余裕がないことも大きな理由だ。
この頃から、また妊娠したいと思い始めた。
「次はあの子を元気な姿で産んであげたい。あの子がおなかに戻ってきてくれると信じたい」。
自分で中絶を選んだのに、身勝手な、都合のよい考え方だとわかっている。
でも、そう思わずにいられなかった。
小さななきがらを見送った時、思わず涙声でこう呼びかけていた。
「また会おうね。またうちにおいでね。みんなで待ってるよ」
検査を受けたかどうかや、胎児に障害があるかどうかにかかわらず、様々な事情で中絶する人は、国内で年16万人を超える。
多くの当事者が葛藤を抱え、それぞれの選択に至る。
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