台湾で卵子提供・№2              2017年 7月22日



●ドナー、患者 お互いを知らず

(読売新聞 2017年5月30日の記事より引用)

台湾での卵子提供で子を得た日本人夫婦たちに、その理由を尋ねると「台湾人は日本人と外見が似ている」「距離が近い」「費用が比較的安い」などと並び、「法律で認められていて安心」という答えが多い。

台湾は2007年、卵子提供を認める内容を含む「人工生殖法」を制定。
当局が認定した医療機関のみで実施でき、全症例を報告することになっている。
法律では、卵子提供者(ドナー)に謝礼はなく、「無償」とされている。

ただ、採卵のために針を刺す必要があるなど身体的な負担は大きく、休業補償の意味も込めて上限9万9000元(約37万円)を「栄養費」として認めている。

台湾の大卒初任給約2万7000元(約10万円)の4倍近く、大きな魅力になっているのは確かだ。


昨年6月に卵子提供をした台北市の大学院生(22)は、「栄養費は日本への旅費と学費に使いました」と笑顔で話した。

ただ、「不妊に悩む誰かの役に立ちたい」という思いも理由の一つだという。

今年3月に採卵した同市内のエステティシャンの女性(25)も、年末年始に一族で集まるたび、「なかなか赤ちゃんができない」と悩む親戚の女性を見てきた。
5年以上不妊治療を続けているが授からず、すでに40歳前半という。
自身は結婚予定の20歳年上の恋人がいる。
前妻との間に2人の子どもがいて、自分は出産するつもりはない。
「使わない卵子なので、有効活用してもらえればいい」という。

台湾の卵子提供の大きな特徴が、ドナーと夫婦がお互いを指定できず、相手の詳細な情報を知ることもできないということだ。

夫婦側が知ることができるのは、ドナーの人種や肌の色、血液型などに限られ、写真も見られない。


そこで、首都近郊の新竹市にある不妊治療施設「送子鳥(コウノトリ)生殖医療センター」は、ドナーと夫婦の間で手紙などを仲介している。

昨年5月に卵子提供した台北市の20歳代の幼稚園教諭は「この縁を大切にしたい。無事に赤ちゃんが生まれることを願っています」と手紙を書き、手編みの帽子を添えた。

「セントマザー産婦人科医院」(北九州市)院長の田中温(あつし)さんは、不妊に悩む夫婦に台湾の情報を積極的に伝えているが、一方で子どもの出自を知る権利が保障されないことを懸念する。

現在の法律では、生まれた子供が将来望んでも、遺伝子上の親を知ることはできない。

「生まれた子供の将来の幸福と権利をよく話し合ってから決めてほしい」。

検討する夫婦に田中さんはそう伝えている。



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